【片勾配】すり付け率の計算の際に「側帯」は含む?含まない?

はじめに

道路設計において、片勾配が変化する箇所ではその「すり付け率」を算出しますが、それを算出する際において「車線幅員のみ勘案しているケース」と「車線幅員+側帯(もしくは側帯相当幅)を勘案しているケース」の両方を見かけますが、どちらが正しいのでしょうか?

結論から先に書くと、準拠する基準が「道路構造令(の解説と運用)」である限り、「車線幅員のみ勘案」が正しいです。ちなみに、例えばNEXCOなら独自基準として「設計要領」というものがあり、これに準拠する場合は「車線幅員+側帯」となっています。

その理由を以下で説明致します。なお、日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」のことを、以下の文中では「解説と運用」と略して記します。

すり付け率の計算に「側帯」を含まない根拠

片勾配のすり付け率の規定は基本的に「急すぎたらダメ」という規定なのですが、反転箇所に限るとこれに加えて「緩すぎてもダメ」という両挟みの規定となります。何故なら反転箇所においてすり付け率が緩すぎると排水性に難が生じる為です。「解説と運用」内の、この「緩すぎてもダメ」の規定の部分に「側帯を含まない根拠」が隠れていますので、以下でそれを説明します。

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下図は説明用の断面図です。左側の図と右側の図は車線幅員が「2750」か「3500」かが異なる以外は全く同じとなっています。

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反転箇所においては図の、対面2車線の内の左側車線が上段の「標準横断勾配1.500%」の箇所から下段の「0.000%」まで移行する際に、赤丸を打っている部分が上昇しますが、その上昇の割合が「緩くなりすぎたらダメ」と規定しています。

ちなみに図の赤丸はセンターから「車線幅員」のみ離れた位置となっていますが、この位置で計算するのが正しいのか、もしくは更に「側帯(もしくは側帯相当幅)」の分だけ外側に寄せた位置で計算するのが正しいのかを、ここでは考えています。

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「解説と運用」P.374では、反転箇所の「緩すぎたらダメ」に関して以下のように規定されています。

『15m区間で、-1.5%から0まですりつくようにする(すりつけ率は車道幅員に応じて異なり1/285~1/365程度になる)』

なお、標準横断勾配が1.5%ではなく2.0%の時は15mではなく20mと規定されていますが、

1.5%:2.0%=3:4
15m:20m=3:4

と割合は全く同じなので、どちらのケースでも同様の計算を行うと同じ「1/285~1/365」という結果に至ります。以下、「1.5%・15m」のケースで説明を進めます。

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さて、「解説と運用」がすり付け率の計算において側帯(もしくは側帯相当幅)を含まず「車線幅員のみ」を対象と考えているのであれば、その通り計算すると「1/285~1/365」という結果に至るハズですし、もし「車線幅員+側帯(もしくは側帯相当幅)」で考えているのであれば、その計算で「1/285~1/365」という結果に至るハズです。

また、道路構造令に規定される車線幅員(標準値)は最大値で3.50m(上図の右側)、最小値で2.75m(上図の左側)ですから、前者ですり付け率を計算すれば「1/285」となり後者で計算すれば「1/365」になるハズだと推察されます。

側帯(もしくは側帯相当幅)を含まずに計算してみると、

<車線幅員3.50mのケース>
・上昇高=3.50m×1.5%=0.0525m
・すり付け率=0.0525m÷15m=0.0035≒1/285.7

<車線幅員2.75mのケース>
・上昇高=2.75m×1.5%=0.04125m
・すり付け率=0.04125m÷15m=0.00275≒1/363.6

となり、「1/285」「1/365」とほぼ一致します。ちなみに側帯(相当幅)の最小値である0.25mでも加えて計算すると、全く異なる結果となります。

以上により、最低でも「緩すぎてもダメ」の部分の規定には側帯(もしくは側帯相当幅)は含まれずに「車線幅員のみ」を対象としていると分かり、当然ながら同一基準内において「急すぎたらダメ」のほうは異なる考え方をしているとは考えづらい為、

「道路構造令の解説と運用」においては、側帯(もしくは側帯相当幅)は含まず「車線幅員のみ」を対象として考えている

と分かることになります。

おわりに

例えば標準的ではない幅員構成の場合などで、反転箇所での「15m」という長さの規定が使えない場合は、「1/285~1/365」というすり付け率をコントロールとして設計を行う訳ですが、その際に間違って「側帯を加えて」計算していて「1/365」なのでOK、などと決めていると、「正しく」側帯を外して再計算するとそれより緩くなってしまいOUTとなりますので注意が必要です。

逆も同じで、例えばNEXCOのように「側帯を含む」基準で設計している場合は、間違って「側帯を含まず」に最急値を用いていると、「正しく」側帯を含んで再計算をすると規定値よりも急になってしまいOUTとなりますので注意が必要となります。

以上、片勾配のすり付け率の計算の際の側帯の扱いについて記しました。