【平面線形】最小曲線半径の「特例値(縮小値)」を採用する場合の留意点

はじめに

道路設計において平面線形を計画する際の、最も基本的な項目の一つに「最小曲線半径」があります。設計速度に応じて「最大ではどれだけの急カーブまで許されるか」という規定となります。

その規定値には標準値の他、「やむを得ない」事情がある場合に許されている「特例値(縮小値)」があります。

ここでは、その「特例値(縮小値)」を採用する際に注意すべき点を記すものとします。

なお、日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」のことを、以下の文中では「解説と運用」と略して記します。

冒頭の「表」のみ見ての判断はダメ

「解説と運用」P.313において、最小曲線半径の冒頭の記述として、標準値と特例値(縮小値)を並べた一覧表があります。

この表を見れば、例えば設計速度が40km/hであれば、「標準値がR=60で、特例値がR=50」と一目で分かります。

標準値を採用する場合は、深く考えずにこの表だけを見て決めても問題にならないケースが大半なのですが(問題になるケースもゼロでは無いし本来であれば技術者としてはこのような姿勢はダメ)、特に特例値(縮小値)を採用する場合は、「表のR=50はそのまま使えない」というケースは多々ありますので注意が必要です。

以下、その部分に関する注意点を記します。

片勾配を打ち切る場合は「表の値」をそのまま使えない

曲線部の最大片勾配は10%ですが、「解説と運用」P.330により、以下のように決められています。

(1)積雪寒冷地域において、積雪の度がはなはだしい地域においては、片勾配を6%で打ち切る。

(2)積雪寒冷地域において、上記以外の地域においては、片勾配を8%で打ち切る。

(3)第3種の道路において、自転車道等を設けない場合は、片勾配を6%で打ち切る。

(4)第4種の道路においては、片勾配を6%で打ち切る。

以上です。「解説と運用」において、(3)以外は一覧表となっているので見落とすケースは少ないと思いますが、(3)は文中での記述となっており、見落としているケース(例えば単なる歩道しか付いていないのに7%以上の片勾配を付しているケース)を多々見かけますので注意が必要です。

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さて、冒頭で述べた最小曲線半径の一覧表内の「特例値(縮小値)」というのは、あくまで「10%の片勾配を付す」という前提で定められたものです。

従って上記(1)~(4)の条件や、もしくはその他の事情により、「10%の片勾配を付けることが出来ない」場合は、最小曲線半径の一覧表内の「特例値(縮小値)」は使用出来ませんので注意が必要となります。

では、最小曲線半径の最小値はいくつになるのかと言うと、「解説と運用」P.320に記載があります。最大片勾配が「6%」「8%」「10%」の3ケースに分けて表で整理されており、その内容を平たくまとめると以下のようになっています。

・「6%」の場合は最小曲線半径は「標準値」までしか使用出来ない。
・「8%」の場合は上記と下記の間の値となっている。
・「10%」の場合は最小曲線半径は「特例値(縮小値)」まで使用出来る。

以上の通り、平面線形の最小曲線半径について特例値(縮小値)を採用する場合は、これに留意して採用値を決めることが基本となっています。

おわりに(更なる留意点)

諸般の事情により所定の片勾配を付すことが出来ない場合に、「最低でも横滑り摩擦係数が0.15を超えないようにすれば良い」みたいな話を聞いたことがある方は多いと思います。

これは、第4種の道路においては片勾配を付さないことが認められている中で、ではどれだけ危険な状況であっても事情があれば片勾配を付さなくても良いのかと考えた時に、決してそんなことは無いという思想のもと、「解説と運用」P.342において、第4種の道路において片勾配を打ち切りまたは低減する際の考え方や規定値が示されており、そこで「横滑り摩擦係数=0.15」を基準として規定値が算出されていることから、第4種以外の道路であってもやむを得ず所定の片勾配を付すことが出来ない場合の「安全性の判定」において、この「横滑り摩擦係数=0.15」をもって判断しようという考えとなっています。

さて、上で述べた「解説と運用」P.320の表(最小曲線半径の表)ですが、片勾配が「6%」「8%」「10%」の他に「片勾配を付さない場合」の規定値も載っています。

この表の値ですが、「片勾配を付さない場合」だけは設計速度に関わらず全て「横滑り摩擦係数=0.15」として最小曲線半径が算出されているのですが(先に述べた太字部分と一致している)、片勾配が「6%」「8%」「10%」の場合は少し安全側の「横滑り摩擦係数=0.10~0.15」で算出されています(設計速度に応じて変化していて、V=40km/hの場合だけは0.15で上記と一致している)。ちなみに設計速度に応じて採用されている横滑り摩擦係数の値は「解説と運用」P.317に記載があります。

と言うことは、例えば第4種で設計速度がV=40km/hより高い道路の場合で、片勾配の打ち切りや低減は先に述べた「横滑り摩擦係数=0.15」を根拠に設計しているにも関わらず、最小曲線半径に関しては上記の表の「6%」の値を採用した場合、それは横滑り摩擦係数が0.15より少し安全側になっており、厳密に言えば「矛盾」していることになります。片勾配計画は「横滑り摩擦係数=0.15」をコントロールとすると決めたのであれば、最小曲線半径の最小値の算定も「0.15」で行っていないと「矛盾していることになる」という意味です。

そのような「矛盾」のある設計としても、基本的には「安全側」の話ですから、そのまま設計を進めれば良いとは思いますが、最低でも「そのようなことになっている」ことは、技術者として分かっておくことが好ましいと思っています。