【インターチェンジの設計】減速車線(直接式)の設計方法を詳しく解説します

はじめに

インターチェンジのランプターミナルにおける変速車線の形式には「直接式」と「平行式」があります。

加速車線には「平行式」が採用されることが多いですが、逆に減速車線のほうは「直接式」が多く採用されます。

下図は減速車線に関して、上段「直接式」を採用した場合(多く採用される)、下段に「平行式」を採用した場合(あまり採用されない)の概要図を表したものです。設計速度は80km/hとして書いています。

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ここでは「直接式の減速車線」に関する設計方法を詳しく解説致します。

平行式と異なり「直接式」の場合はテーパー長が規定されておらず「テーパー角」で規定されているので、まずは前半で、

・テーパー長を決める方法とその意味

を解説します。

後半では、

・本線が直線ではなく「曲線」である場合の留意点

について解説致します。

なお、日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」のことを、以下の文中では「解説と運用」と略して記します。

テーパー長を決める方法とその意味

■延長ではなく「角度」で規定される

「解説と運用」P.565では直接式の減速車線のテーパー長(テーパーの長さ)に関して「特に規定しないが、テーパの流出角は1/15~1/20を目標にするのがよい」と記されています。

従って「テーパー角が1/15~1/20」になるように逆算して、テーパー長を決めることになります。

■実際の決め方

以下、本線の道路種級は第1種第3級程度、本線の設計速度は80km/hをイメージして参照図を記していますが、道路種級や設計速度には関わらない内容となります。

さて、下図はテーパー部分の平面図と、テーパー端(A-A)、及びテーパー終わり(B-B)での幅員構成を記しています。

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流出を行う走行車両は、A-A断面の本線最外車線から、B-B断面においては本線最外車線から側帯相当幅をまたいだ位置にある減速車線まで移行(シフト)します。その「シフト量」は、上図のような断面図を考えれば単純計算で4000mm、すなわち4.000mと求まります。

テーパー長の算出は、この「シフト量4.000m」を用いて、

 シフト量 ÷ テーパー角 = テーパー長

と求めます。テーパー角を1/15とする場合なら、テーパー長は

 4.000m ÷ 1/15 = 60m

となりますし、テーパー角を1/20とする場合なら、テーパー長は

 4.000m ÷ 1/20 = 80m

となります。ちなみに上図はこの「80m」の場合で書いています。

テーパー長の決め方の説明としては以上です。次に、上の「計算」の意味を説明します。

■計算の意味の説明

1/15の場合も同様ですが、ここでは1/20の場合で説明を進めます。

「テーパー角を1/20」と規定する意味は、下図のように、「本線進行方向に⑳の距離を進んだ際に、①の割合で横方向にシフトするような割合となるように、テーパー角θを規定している」という意味となります。

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すなわち、算数的な比で表せば、

テーパー長80m:シフト量4.000m=⑳:①

という比となっており、先に「シフト量4.000m」が決まっているので、この比となるように「テーパー長80m」を算出する為の計算が、

 4.000m ÷ 1/20 = 80m

である訳です(何故に分数の割り算となるのか等の「算数の内容の説明」は省略します)。

本線が曲線である場合の留意点

■あくまで「角度」の規定であることに注意

上の例では「本線が直線」である為、「80m進むと4mシフトする」という割合で減速車線の直線をセットすれば、テーパー端(A-A)での角度θもぴったり「⑳進むと①シフトする」角度となりますが、本線が曲線の場合は必ずしもそうなりません。

その場合、上記のように「80m」と決めておけば、「全体80mで見れば、⑳(80m)進むと①(4.000m)シフトする割合となっているのだから、テーパー端での実際の角度はどうでも良いか」というような態度は、技術者としては慎まれるべきです。

すなわち、「⑳進んだら①シフトする角度θ」とは、上図の「赤線で示す三角形」を考えれば、

 tanθ = 1/20

ということですから、すなわち、

 tan2.862405° = 1/20

ということであり、すなわち「テーパー角θ=2.862405°」と規定されていると言い換えることが出来る訳です。

従って、いわゆる「変化の割合」として「⑳(80m)進むと①(4.000m)シフトする割合」を勘案してテーパー長を決めた後にも、本線が曲線の場合は「テーパー端での実際の角度θ」が何度であるか(1/〇で表したら1/15~1/20の範囲にあるか)を必ず照査する必要があります。

それをしないと「極めて不適切な線形」となる例を2つ下に記します(このような例は何度も見かけたことがあります)。

■本線が曲線の場合の適切な例

例えば本線がR=700であれば、減速車線も同様にR=700を採用すれば(下図)、テーパー角θはほぼ1/20となります。

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照査の方法ですが、減速車線の線形を決めたら、テーパー端での方向角が算出出来ます。それと、テーパー端での本線の方向角との差が「テーパー角θ」となります。

今回の例では、θ=2.869058°となり、

 tan2.869058° = 0.050116… ≒ 1/19.95

となっており、「ほぼ1/20となっている」と言えます。

■本線が曲線の場合の不適切な例

例えば本線R=700に対して、他の事情を優先して減速車線をR=2000としてしまった場合が下図です。

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この場合は、テーパー角θ=0.711105°となっており、

 tan0.711105° = 0.012412… ≒ 1/80.57

となっており、「1/15~1/20」の範囲には全く入っておらず(角度が緩すぎる)、「極めて不適切な例」となります。

■テーパー角は緩すぎてもダメ

テーパー角がきつすぎると「急すぎて流出車両がきちんと走れない」という意味で不適切となり、これは分かりやすいと思います。

もし、緩い分にはどれだけ緩くてもOKなのであれば、規定は「1/15以下とする」となっているはずですが、「1/15~1/20」と下限値も設定されているということは、「緩すぎてもダメ」ということを意味しています。

何故に「緩すぎてはダメ」かと言うと、例えば上図の「不適切な事例」が典型的ですが(路肩のラインを見れば「テーパー角がほとんど付かずに真っすぐ通ってしまっている」と分かると思います)、このような線形は「テーパーの始まりがどこか視覚的に分からない」とか「本線を通過したい車両が間違って減速車線に入ってしまう」などの理由で「不適切」とされています。

従って「解説と運用」に準拠して計画する場合は、原則として「1/15~1/20」の範囲内に収めるべきと私は考えています。

おわりに

以上、直接式の減速車線の設計方法を詳しく解説しました。