【インターチェンジの設計】分離帯ランプの曲線拡幅量の割増しについて

意識せずに「標準幅員」では無くなってしまう

ここで述べる内容は、全て日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」に準拠した話となります。以下、「解説と運用」と略して記します。

さて、インターチェンジのランプは「ランプ規格」ごとに標準幅員が決まっており、そしてそれに応じて「曲線拡幅量」が規定されています。

主に左側路肩に関して、縮小値を採用したり、逆に何かの事情で標準値よりも広くしたりして、「標準幅員」とは異なる幅員を採用した場合は、その増減量に応じて「曲線拡幅量」も加減しなければなりません。このことは、多くの方もご存じと思います。

今回取り上げたいのは、上記のような「意識的な路肩幅員の変更」の話ではなく、下図の下段のような「分離帯ランプ(2方向分離2車線のランプ)」に関するものです(下図はA規格ランプとなります)。

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分離帯ランプ(2方向分離2車線のランプ)の場合、それ自体に対しては「曲線拡幅量」の規定がなく、すなわち分離帯より片方だけ見れば「1方向1車線」に他ならない訳ですから、それの「曲線拡幅量」を参照して設計することになります。

さて、上図の上段には「1方向1車線」の幅員図を記していますが、これと下段の「分離帯より片方のみ」を見比べると、総幅員(①と②)が異なっていることが分かります。すなわち、下段のほうが右側路肩(に相当する部分)が0.25m狭い分、総幅員も0.25m狭い訳です。

上図はA規格ランプですが、B~D規格ランプも全て同じ関係となっています。上図のA規格ランプも含めて、全ての規格の①と②を列記すると以下の通りです(「解説と運用」のP.546~549より)。

■A規格ランプ
①7.00m
②6.75m

■B規格ランプ
①5.50m
②5.25m

■C規格ランプ
①5.25m
②5.00m

■D規格ランプ
①4.75m
②4.50m

すなわち、分離帯ランプ(2方向分離2車線のランプ)の場合、特例値を使用するなどしておらず、「そのまま標準幅員を採用する」場合においても、「曲線拡幅量」という観点から見た場合、「勝手に標準幅員とは異なる(0.25m狭い)幅員となっている」ことになるので、注意が必要である訳です。

標準幅員とは異なる場合の曲線拡幅量について

「解説と運用」P.543の、「1方向1車線」の曲線拡幅量の規定値一覧表には、表の最も上の欄に、

・A規格ランプ7.0m
・B規格ランプ5.5m
・C規格ランプ5.25m
・D規格ランプ4.75m

と、上記の①と一致した値(標準幅員)が明記されています。

「解説と運用」P.556には、注意事項の1つ目として、

『ⅰ)基準に示された拡幅量は標準幅員に対するものであるため、異なった横断構成を採用する場合は、標準幅員からの幅員差だけ拡幅量を加減することが必要である。』

と記されている訳ですが、今回のケースは「異なった横断構成を採用」しているというよりかは、分離帯ランプは「右側路肩の内、0.25mは分離帯の地覆を兼ねているので、標準幅員よりも舗装面が0.25m狭くなっている」というケースです。

では、地覆というのは舗装面と同一面ではないながらも、「幅員」としては認められている空間ですから、これは「曲線拡幅量」を考える場合の幅員部分に含めて良いのかと言えば、決してそんなことは無いということが、「解説と運用」P.556の注意事項の2つ目に記されています。以下に引用します。

『ⅱ)トンネルまたは長さ50m以上の橋もしくは高架のランプにあって、路肩の一部が地覆を兼ねている構造の場合は、前述の必要総幅員を確保するため、原則として、地覆の幅員だけ拡幅量を増すものとする。(後略)』

以上は「トンネル、橋もしくは高架」に関する記述ですが、「曲線拡幅量を考える際の幅員に、地覆を含めてはならず、地覆の分は拡幅量を増すこと」という趣旨は今回取り上げている「分離帯ランプ」にもそのまま適用されるべきであり(適用しなくても良いとは読み取りようがない)、また後略部分には「地覆の幅の拡幅量を省略することができる」旨も記されていますが特例的な扱いであり、あくまで「原則」は上記の通りである訳です。

以上のことから、分離帯ランプ(2方向分離2車線のランプ)の場合、曲線拡幅量は0.25m割り増すことが原則であると、私は考えています。

おわりに

例えばA規格ランプなら左側路肩に縮小値の規定がありますが、縮小値を採用しているにも関わらず、曲線拡幅においてそのことを勘案し忘れているというケースも少なからず見かけるのですが、これは「大半がそうなっている」というほど多い訳ではありません。

それと比べると、今回取り上げた「分離帯ランプ(2方向分離2車線のランプ)」の曲線拡幅において0.25mの割増しを忘れているというケースは非常に多いです。体感では「大半がそうなっている」というレベルと思います。

技術論としては「0.25m割り増すべき」が正解であると思うことは本文で述べた通りなのですが、一方で「現実にはそうなっていない設計が大半である」ということを踏まえると、「0.25m割り増して当たり前だ」とまでは言えないな、とも思っています。

という訳で、この事項は「初期段階において、関係者に、特に強く確認すべき事項」として扱っています。

新規設計の場合は、本文で述べたような内容を説明すると、ほぼ例外なく「0.25m割り増す」方向で決まります(割り増さないという風には読み取りようがない為)。既往の設計を見直す場合は、「0.25m割り増す」場合と「割り増さずにそのまま」の場合が半々という印象です。

結果的には「割り増さずにそのまま」となる場合においても、過程として「技術論としては、0.25m割り増すべきだが」という提案や確認などを踏まえることが、技術者の姿勢として極めて肝要であると考えています。