【縦断線形】バーチカル曲線(縦断曲線)の計算方法(VCLや半径Rの計算)の解説

はじめに

本文中では、日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」のことを、「解説と運用」と略して記しています。また、添付の縦断図は「横1:縦5」となっています(縦方向に5倍大げさに書いています)。

本記事の概要

VCL(いわゆる縦断曲線長)とその曲線の半径Rについての関係式や実際の計算方法について前半に記しています。

それらの根拠については、大元になる「解説と運用」を引用しながら後半に記しています。

VCLと半径Rの関係式

VCL:縦断曲線を設置する区間の水平距離(いわゆる縦断曲線長) (m)
R:縦断曲線の半径 (m)
i:勾配差 (例えば勾配差が5%なら0.05という値)

とした時、以下の関係式が成り立ちます。

VCL = R × i …式①
または、
RVCL ÷ i …式②

例えば下図でしたら、

f:id:dourosekkei:20210118112145j:plain

40 = 800 × 0.05 …式①
また、
800 = 40 ÷ 0.05 …式②

という関係が成り立っています。

実際の設計作業での使い方

例えば下図のように前後の勾配が決まっていて、そこに「半径R=800の縦断曲線を設置したい場合の縦断曲線長VCLはいくつか」と考える場合には、

f:id:dourosekkei:20210118112749j:plain

まず勾配差を、
7.000%ー2.000%=5.000%=0.05
と計算して(同方向なので引き算)、

式①を用いて、
VCL = 800 × 0.05 = 40
と算出します。

逆に下図のように、VCL=40のほうが先に決まっていて、その半径Rを求めたい場合は、

f:id:dourosekkei:20210118113411j:plain

式②を用いて、
R = 40 ÷ 0.05 = 800
と算出します。

なお、上記の事例は
・(左側から右側へ見て)上り勾配の連続
・凸型曲線
ですが、

・下り勾配の連続

であっても、

・凹型曲線

であっても、主旨は全く同じです。

実際の設計作業の使い方(その2)

もう一つのサンプルケースを示します。先ほどのケースと異なるのは、「勾配が上り→下り」と変化しているので、「勾配差の算出が足し算となる」という点のみです。

f:id:dourosekkei:20210120101402j:plain

すなわち、まず勾配差を、
2.000%+5.000%=7.000%=0.07
と計算して、

上図は「半径R=500の縦断曲線を設置したい場合の縦断曲線長VCLはいくつか」を考えていますので、

式①を用いて、
VCL = 500 × 0.07 = 35
と算出します。

逆に下図のように、VCL=35のほうが先に決まっていて、その半径Rを求めたい場合は、

f:id:dourosekkei:20210120102050j:plain

式②を用いて、
R = 35 ÷ 0.07 = 500
と算出します。

以上は凸型曲線の場合の事例ですが、凹型曲線の場合でも主旨は全く同じです。

以上で実際の設計作業で用いる計算に関しての説明は終わりです。

算式の根拠

上で述べた式①、式②に関する根拠を記します。

まずは「解説と運用」P.423の引用を記します。

<引用>

L_r={\displaystyle\frac{R}{100}}Δ

R=100{\displaystyle\frac{L_r}{Δ}}

R:縦断曲線の半径(m)
L_r:縦断曲線の曲線長(m)
Δ:縦断勾配の代数差の絶対値(%)

<引用終わり>

上の引用を根拠として、冒頭の式①及び式②が導かれることを以下に記します。

引用の1つ目の式の右辺を変形すると以下の通りです。

L_r=R×{\displaystyle\frac{Δ}{100}}

この式について、
・左辺のLrは式①のVCLと同じ(縦断曲線の曲線長)
・右辺のRは式①のRと同じ(縦断曲線の半径)
・右辺の
{\displaystyle\frac{Δ}{100}}
は式①のiと同じ(例えばΔが5.000%なら、iは0.05)

ですから、すなわちこれで式①が表されたことになります。

また、引用の2つ目の式の右辺を変形すると以下の通りです。

R=L_r×{\displaystyle\frac{100}{Δ}}=L_r÷{\displaystyle\frac{Δ}{100}}

この式について、
・左辺のRは式②のRと同じ(縦断曲線の半径)
・右辺のLrは式②のVCLと同じ(縦断曲線の曲線長)
・右辺の
{\displaystyle\frac{Δ}{100}}
は式②のiと同じ(例えばΔが5.000%なら、iは0.05)

ですから、すなわちこれで式②が表されたことになります。

おわりに

以上、バーチカル曲線(縦断曲線)の計算方法について解説しました。

【平面線形】クロソイドがある場合の最小曲線長について詳しく解説します

はじめに

日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」のことを、以下の文中では「解説と運用」と略して記します。

さて、平面線形の最小曲線長について、「解説と運用」P.325では以下の通り規定されています。

①道路交角が7°以上の場合…最小曲線長は最小緩和区間長の2倍…
②道路交角が7°未満の場合…上記とは別途で規定

クロソイドを設置する(省略出来ない)ような小さな半径で計画する箇所においては、道路交角は7°以上であるケースが主であると思いますので、ここでは上記①(☆印)を適用するケースでクロソイドを設置する場合(下図のような場合)の、その適用に関する留意点を詳しく解説致します。

f:id:dourosekkei:20201216172030j:plain

「最小曲線長」の最も基本の説明

極めて当たり前のことですが念のため記すものです。

クロソイドがある場合においては、通常「クロソイド+円曲線+クロソイド」と3つの要素が並びます。「最小曲線長」とは、この3つの要素の長さの合計となります。

最小曲線長を採用したケースとは?

以下、設計速度が60km/hの場合を例にとって説明しますが、設計速度が何km/hであっても主旨は共通となります。

さて、設計速度が60km/hの場合、「解説と運用」P.355より、最小緩和区間長は50mですから、最小曲線長はその2倍の100mです。例えば曲線半径R=200を採用する場合、これをそのまま採用すると下図の通りです。

f:id:dourosekkei:20201216172515j:plain

図の左から見て、曲率半径が無限大であるところからクロソイド(A=100)に差し掛かり、曲率半径が徐々に小さくなってそのクロソイドの終わり(図の中央)で曲率半径はR=200となりますが、それは一瞬で(R=200の要素長はL=0mで)すぐに右側のクロソイドに差し掛かり、曲率半径は徐々に大きくなってそのクロソイドが終わる点で曲率半径が無限大に戻るような線形です。

すなわち、上図のように前後のクロソイドの長さが最小緩和区間長L=50mで、かつ中央の円曲線の長さがL=0mであれば、当たり前ですが「クロソイド+円曲線+クロソイド」の長さは最小緩和区間長L=50mの2倍の100mとなりますので、これが「最小曲線長を採用した状態」となります。

上図のような線形は出来るだけ採用すべきでない

何となく直感でも「中央の円曲線の長さが0mってどうなの?」と違和感の感じる線形であると思いますが、「解説と運用」P.329~330においても下記の引用のように記されています。なお、引用文中の「凸型曲線」という文言は上図のような線形のことです。

<引用>
運転者は半径が最も小さくなったところで、急にハンドルを戻さねばならないので、最小の曲線半径が相当大きくないかぎり、スムーズなハンドル操作とはいえない。また、凸型曲線では、横断勾配のすりつけに十分注意しないと折れ曲がって見えることが多く、運転者に滑らかな感じを与えない曲線になる。
<引用終わり>

以上の通り、上図のような線形は、規定上ぎりぎり認められてはいるのですが、相当の理由がない限り「回避すべき線形案」ということになります。

改善方法

「解説と運用」にて上記の引用文の直後で述べられていますが、中央の円曲線の長さを「2秒走行長以上」確保するのが望ましいとされています。

 今回の例であれば設計速度が60km/hですから、すなわち車両は1時間(=3,600秒)で60km(=60,000m)を走行しますので、

1秒あたりの走行長=60,000m÷3,600秒=16.666…m/秒

従って、

2秒走行長 = 16.666…m/秒 × 2秒 = 33.333…m

となりますので、下図のように中央の円曲線の長さを33.333…m確保した状態が実質的な「最小曲線長」を確保した状態となります。

f:id:dourosekkei:20210114044556j:plain

実際の設計においての捉え方

最初に述べた「中央の円曲線の長さが0m」の状態でも道路構造令に「違反」する訳ではありませんので、地形やその他の状況によりやむを得ない場合であればこれも許されると言えます。

一方で道路構造令の「解説と運用」においては上述の通り、「中央の円曲線の長さが0m」は好ましくなく(0mと言うよりかは「2秒走行長」未満の短い延長であれば好ましくない)、中央の円曲線は「2秒走行長」以上の確保が望ましいと明記されている訳ですから、地形などの諸条件を勘案しても「2秒走行長」が確保出来るにも関わらず、この観点が頭から抜け落ちているが故に「2秒走行長未満」となってしまっている、というような設計は厳に慎まれなければならない、というのが私の考えです。

例えば設計速度60km/hの一般国道の設計において、下図のような線形があったとします。

f:id:dourosekkei:20210114045840j:plain

中央の円曲線の長さが「2秒走行長」33.333…mを割り込んでいますので、地形などの諸条件が許す範囲においては「見直すべき」というのが私の考えです。

「解説と運用」P.363により、設計速度60km/hの「一般国道」の場合、クロソイドの最小パラメータはA=90まで認められていますので、上記線形の

A=100をA=90に

見直し、また中央の円曲線に関して、

R=150をR=160に

見直せば、クロソイドのパラメータを小さくして円曲線の半径を大きくしていることから、左右のクロソイドは短くなって中央の円曲線が長くなる方向に作用し、前後の直線が全く同じ場合であっても下図のようになり、中央の円曲線の長さは「2秒走行長」33.333…m以上とすることが出来ます。

f:id:dourosekkei:20210114051244j:plain

この状態でもクロソイドの長さは最小クロソイド長(最小緩和区間長)50mを満足しており、かつ、変更前(青)と変更後(紫)を重ね合わせれば下図の通りであり、

f:id:dourosekkei:20210114051619j:plain

通過する位置も「ほとんど変わらない」訳ですから、片勾配すり付け率などその他の条件も満たされる(クロソイドが短くなったことによる不具合が生じない)のであれば、後者(紫)のように見直すべきと言うのが私の考えであり、また実際の設計においてもこのようなケース(受け取った既往の計画が前者(青)のような場合)において、上で述べたようなことを説明した上で後者(紫)のように見直すことを私は必ず提案しますし、余程の制約条件が無い限り、提案した後者(紫)が採用されます。

おわりに

以上、「クロソイドがある場合の最小曲線長」について詳しく解説しました。

【縦断線形】縦断曲線の「特例値」について詳しく解説します

はじめに

道路線形において、縦断勾配の変化点には縦断曲線(バーチカル)を設置します。

その縦断曲線に関しては基本的には「特例値」は規定されていないのですが、ある「唯一」のケースに限り「特例値」が認められており、ここではそれについて解説致します。

なお、日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」のことを、以下の文中では「解説と運用」と略して記します。また、添付の縦断図は「横1:縦10」となっています(縦方向に10倍大げさに書いています)。

縦断曲線に関する「唯一」の特例値

■「解説と運用」で記述されている内容

「解説と運用」P.422の記述をそのまま以下に引用します。

<引用>
ただし、設計速度が1時間につき60キロメートルである第4種第1級の道路にあっては、地形の状況その他の特別な理由によりやむを得ない場合においては、凸型縦断曲線の半径を1,000メートルまで縮小することができる。
<引用終わり>

また、「解説と運用」P.433の記述をそのまま以下に引用します。

<引用>
都市部における主要幹線道路においては、設計速度60km/hで第4種第1級の設計が適用されることが多い。しかし、このような道路において立体交差等を行う場合、前後の交差点の状況等により規定の凸型縦断曲線半径をとることができない場合がしばしば生ずる。したがってこのような場合には、立体交差を助成する意味から用いることのできる凸型縦断曲線半径の最小値を縮小し、半径1,000mまで許容することができるものとする。この値を用いるときには、以上の趣旨を十分に勘案してから行うべきである。
<引用終わり>

「解説と運用」で述べられている内容は以上の通りです。

■解説

上記の内容を図解で解説していきます。

この特例値が適用されるのは都市部における下図のような道路です(横方法が本線(主道路)で、縦方向が交差道路(従道路))。

f:id:dourosekkei:20201215172239j:plain

都市部ですから、一般的には平地であり、かつ周囲に建物が多数ありますので、上図の赤い破線で囲っている本線立体部以外の、側道部分や交差道路部分がフラットな形状となっており、すなわち周辺の建物が経っている隣接地と容易にアクセス出来るようになっています。

従って立体交差部においては、赤い破線で囲っている本線立体部が凹凸を繰り返すことによって上に上がるか下に下がるかすることによって、交差点において交差道路と立体交差している訳です。

オーバーパス(本線が上)の場合の本線立体部の縦断図は下図のようになります。「第4種第1級・設計速度60km/h」の場合に限り、紫で示す凸型バーチカルに関して、規定値(標準値)の半径はR=1400であるところを、特例的にR=1000まで認めよう、というのが本規定の趣旨となっています。

f:id:dourosekkei:20201215173824j:plain

また、アンダーパス(本線が下)の場合の本線立体部の縦断図は下図のようになりますが、このケースにおいても紫で示す部分が凸型バーチカルとなりますので、本規定が適用されることになります。何故なら、上で引用した「解説と運用」の記述を読む限り、オーバーパスかアンダーパスかは特に言及されていない為です。

f:id:dourosekkei:20201215174445j:plain

以上が本規定に関する解説となります。

■適用の際の注意

ここで述べる内容は今回の件に限らず、どのような設計項目に関しても「特例値」を採用する場合には共通する話なのですが、特例値は「むやみに使用してはならない」という話です。

例えば設計速度が40km/hの一般道路に関して、「本路線は平面曲線半径は特例値R=50まで認める」と決定されている路線があった場合に、あたかも「今回はR=50が標準だ」と勘違いしてしまって、交角が薄くてR=50でもR=60(標準値)でもほとんど大差は生じないのに機械的にR=50を適用してしまっているような計画を見かけるのですが、このような姿勢は明らかに間違っています(と個人的にはそのように思っています)。

特例値というのはあくまで「やむを得ない場合に用いる」ものですから、標準値を用いても大差が無いにも関わらず特段の意味も無く特例値を用いるようなことはあってはなりません。

以上を踏まえ今回のケースを考えます。

都市部(市街地)と言っても地形が真っ平とは限りません。例えば地形の平均的な勾配が1%程度であったとして、本線がアンダーパスの場合の本線立体部の縦断線形は下図のようになります。下図の上段は凸型バーチカルを特例値(紫)、下段は標準値(緑)としています。

なお、上段の右側がR=1000ではなくR=1250なのは、最小縦断曲線長VCL=50がコントロールとなっている為です。結果的に半径はR=1250となり、R=1400(標準値)に満たないので特例値ということになります。

f:id:dourosekkei:20201215174930j:plain

図の左側に関しては、上段の特例値と下段の標準値では大きな差が生じていますが、右側に関しては折れが小さい(5%と1%が同方向の為)ことから上段でも下段でも大差は生じません。このような箇所において「今回の最小値はR=1000だから」と下段と大差が無いにも関わらず、また特段の(シビアな)制約条件も無い場合に「深く考えずに上段を採用している」というようなことはあってはならないと、個人的にはそのように考えています。

おわりに

以上、縦断曲線の「特例値」について詳しく解説してみました。

【インターチェンジの設計】「集約ダイヤモンド型」と「平面Y型」の違いを詳しく解説します

はじめに

本文中では、日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」のことを、「解説と運用」と略して記します。

さて、「解説と運用」のP.523のインターチェンジの形式の解説において、「集約ダイヤモンド型」と「平面Y型」について、どちらも下図のような模式図が記載されており「似ている」と思います。

f:id:dourosekkei:20201210034535j:plain

「解説と運用」P.528からは解説が詳述されますが、「集約ダイヤモンド型」と「平面Y型」の違いは、図面下側のランプの取付部が「平面交差」と記されているか否かの違いくらいで、「結局、何が違うんだ?」と思われる方も少なくないのだろうと想像します。

ここでは、その両者の「違い」について詳しく説明すると共に、各型式に関する簡単な留意点も付記します。

本形式の基本の説明

下図は、上の図に赤色で記した部分を追記した図です。念のため、「最も基本的な部分」から説明します。

f:id:dourosekkei:20201210035033j:plain

横方向に伸びる道路が「本線」となります。その本線に対してダイヤモンド型(菱形)の形状で4つのランプが配置され、それぞれ「ロングランプ」と接続されています。

なお、「ロングランプ」という名称は正確なものではありません。「至 一般道路」と記している方向に長く伸びており、伸びた先で一般道路(国道や県道など)に接続されている「ロングランプ」となっています。本線が有料道路である場合、一般道路に至るまでの途中に料金所があります。

以上が本形式の「標準的」な形状であり、これについて解説していきます。上図の赤線の破線で囲った部分を拡大したものが、次以降に出てくる図となっています。

集約ダイヤモンド型

「集約ダイヤモンド型」とは、下図のように箇所②と箇所③が「平面交差点」の規格となっている形式です。ちなみに箇所①は両形式とも共通(平面交差点)となっています。

「平面交差点」の規格ですから、箇所①と共に、②も③も通過車両は徐行で曲がる前提となっており、すなわち滑らかな平面線形ではなく「導流路」の規格でキュッとコンパクトに曲がる形状となっています。

また平面交差点の規格ですから、箇所①と共に箇所②にも「一時停止」が伴います。ちなみに箇所③は「分流」ですので一時停止は伴いません。

f:id:dourosekkei:20201210040549j:plain

以下、両形式の「違い」以外の留意点について簡単に記します。

箇所①について、上図では本線下のランプのほうに停止線(一時停止)を設けていますが、こちらを停止させずに通過させ、本線からのOFFランプのほうに停止線を設ける場合もあります。

箇所②については、上図では本線からのOFFランプのほうに停止線(一時停止)を設けていますが、こちらに関してはここに停止線を設けるケースがほとんどかと思います(私の経験上です)。

平面Y型

「平面Y型」とは、下図のように箇所②と箇所③が平面交差点ではなく「合流」「分流」の形式となっているものです。すなわち導流路としてコンパクトに曲がっている訳ではなく、平面線形を持って滑らかに曲がっており、また一時停止も伴いません。これが上の「集約ダイヤモンド型」とは決定的に異なる部分となります。

f:id:dourosekkei:20201210041818j:plain

箇所①については本図は両形式とも共通の「導流路による平面交差点」として描いていますが、「平面Y型」においては箇所①においても導流路ではなく平面線形で滑らかに曲げた上で、停止線を設けるケースもあります。

ただし、では上図のように箇所②と箇所③は平面線形であるが箇所①が導流路の場合は、「これは平面Y型とは呼ばないのではないか?」と言えば、決してそんなことはなく、「解説と運用」P.530の解説や模式図を見る限り、むしろ本図の組み合わせこそが「平面Y型」とされています。

平面Y型に「合流車線」を設けるケース

両形式の「違い」とは全く異なる話ですが、「平面Y型」の箇所②においては、合流するそれぞれのランプの設計速度は同一であることがほとんどなので、合流する際の「加速」は生じないのですが、合流の頃合いを見計らう為の「合流車線」として、下図のように加速車線形式で計画することもあります。

f:id:dourosekkei:20201210043400j:plain

集約ダイヤモンド型に「合流車線」を設けると…

集約ダイヤモンド型の箇所②に「合流車線」(加速車線)を設けた場合は下図の通りとなります。

f:id:dourosekkei:20201210095115j:plain

こうなると箇所③に加えて箇所②においても、導流路規格でコンパクトに曲がっているとは言え停止線(一時停止)は生じない訳ですから、「平面交差点」という色合いが極めて薄れ、集約ダイヤモンド型というよりかは「平面Y型」と呼ぶほうが正しいようにも思えてきます。ひとつ前の『平面Y型に「合流車線」を設けるケース』と見比べた時に、箇所②及び箇所③における「曲がり具合」が異なるだけで、機能的な意味での「形状」に特に相違が無いことがお分かり頂けると思います。

このような形式に対して無理にどちらかの名称を当てはめようとすることに意味はありません。更に言うと、例えば自分や関係者が「集約ダイヤモンド型」だと思って計画を進めている際に、諸条件をクリアする為には箇所②に合流車線(加速車線)を設ける(上図)ことが適切だったとして、「このほうが適切だけど、こうしてしまうと『集約ダイヤモンド型』ではなく『平面Y型』になってしまうのでダメかなぁ…」と言った発想は明らかにおかしいのであって、そのように「名称」に固執する意味は何もないので「あくまで求められる機能を出来るだけ担保出来るような形状を考える」のが正しい姿勢ではないかと、個人的にはそのように考えています。

余談(縦断の緩勾配について)

両形式とも、「平面交差点」に該当する箇所には「緩勾配」の確保が必要となります。特に「平面交差点ではあるが一時停止は伴わない箇所」において緩勾配の確保が必要なのか、確保する場合は(停止線が無いので)どこを基点として確保するのかなど様々なケースがありますので留意が必要です。

おわりに

以上、「集約ダイヤモンド型」と「平面Y型」の違いについて詳しく解説してみました。

【片勾配】同方向の曲線に挟まれる短い直線区間の片勾配について

はじめに

本文中では、日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」のことを、「解説と運用」と略して記します。

主旨と結論

「解説と運用」P.293によれば、同方向の曲線に挟まれる「短い直線」はブロークンバックカーブと呼ばれ、視覚的に好ましからざる線形とされているのですが、下の平面図に示すような「20m以下の非常に短い直線」は問題にしなくて良いとされています。何故なら非常に短い場合は視覚的には「短い直線」の存在は分からず「複合曲線(同方向に連続した曲線)」に見える為です。

ポイントは、

・短い直線の存在は「視覚的」に好ましくない。
・ただし非常に短ければ「視覚的に分からない」ので問題視しなくて良い。

の二点です。

f:id:dourosekkei:20200603182029j:plain

さて、そのような平面線形における片勾配すりつけ計画において、上図のCASE1のような計画、すなわち「短い直線部分を無理に拝み勾配に戻している」計画をよく見かけるのですが、これは好ましくない(×)と私は考えています。

すなわち、上図のCASE2のように、「前後の曲線の片勾配と合わせた向きの片勾配で、短い直線区間も計画しておく」のが好ましい()と考えています。

両CASEのイメージ図を書くと以下の通りです。

f:id:dourosekkei:20200603182044j:plain

CASE1というのは、非常に短い直線はせっかく「視覚的に分からない」ので問題視しなくて良いとされているのに、そこをわざわざ「拝み勾配」とすることにより、「視覚的な滑らかさを失ってしまっている」ことになっている訳で、これが私が好ましくないと考えるポイントとなります。

CASE2のほうは、この「視覚的に滑らかである」ことに加えて、「反転箇所が生じないので排水性も良好」であり、更には「片勾配すりつけ率が緩くなるので走行性も良好」である訳ですから、「基本的に悪い点は何一つなく、良い点しかない」と言えるほどだと思っています。

おわりに

何か事情があってCASE1を採用する場合は、所定の片勾配すりつけ率を満足出来ている限り、それはそれで特段の問題は無いと思います。

ただ、特段の事情もなく、例えば「専用ソフトで自動設計させたらそうなっていた」とか、「直線部は拝み勾配としておいたほうが、『解説と運用の通り』と言えるので説明がラクだ」とか、そのような姿勢は技術者としては厳に慎まれるべきというのが私の考えです。

そんな訳で、事前に関係者に確認し了解を得た上での話ですが、私は余程の事情がない限りはCASE2を採用しますし、確認段階において本記事で述べたような内容を相手に説明しますと、ほとんどの方が「CASE2の採用」で納得頂いています。

最後に、主旨とは無関係なので触れませんでしたが、上の説明図の「R=100に対して片勾配7.0%」は設計速度40km/hの規定値となっています。A=60のクロソイド長は36mであり(≒規定値35m)、この条件においてCASE1であっても片勾配すりつけ率は規定値1/100以下で十分に収まっています。