【片勾配】同方向の曲線に挟まれる短い直線区間の片勾配について

はじめに

本文中では、日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」のことを、「解説と運用」と略して記します。

主旨と結論

「解説と運用」P.293によれば、同方向の曲線に挟まれる「短い直線」はブロークンバックカーブと呼ばれ、視覚的に好ましからざる線形とされているのですが、下の平面図に示すような「20m以下の非常に短い直線」は問題にしなくて良いとされています。何故なら非常に短い場合は視覚的には「短い直線」の存在は分からず「複合曲線(同方向に連続した曲線)」に見える為です。

ポイントは、

・短い直線の存在は「視覚的」に好ましくない。
・ただし非常に短ければ「視覚的に分からない」ので問題視しなくて良い。

の二点です。

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さて、そのような平面線形における片勾配すりつけ計画において、上図のCASE1のような計画、すなわち「短い直線部分を無理に拝み勾配に戻している」計画をよく見かけるのですが、これは好ましくない(×)と私は考えています。

すなわち、上図のCASE2のように、「前後の曲線の片勾配と合わせた向きの片勾配で、短い直線区間も計画しておく」のが好ましい()と考えています。

両CASEのイメージ図を書くと以下の通りです。

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CASE1というのは、非常に短い直線はせっかく「視覚的に分からない」ので問題視しなくて良いとされているのに、そこをわざわざ「拝み勾配」とすることにより、「視覚的な滑らかさを失ってしまっている」ことになっている訳で、これが私が好ましくないと考えるポイントとなります。

CASE2のほうは、この「視覚的に滑らかである」ことに加えて、「反転箇所が生じないので排水性も良好」であり、更には「片勾配すりつけ率が緩くなるので走行性も良好」である訳ですから、「基本的に悪い点は何一つなく、良い点しかない」と言えるほどだと思っています。

おわりに

何か事情があってCASE1を採用する場合は、所定の片勾配すりつけ率を満足出来ている限り、それはそれで特段の問題は無いと思います。

ただ、特段の事情もなく、例えば「専用ソフトで自動設計させたらそうなっていた」とか、「直線部は拝み勾配としておいたほうが、『解説と運用の通り』と言えるので説明がラクだ」とか、そのような姿勢は技術者としては厳に慎まれるべきというのが私の考えです。

そんな訳で、事前に関係者に確認し了解を得た上での話ですが、私は余程の事情がない限りはCASE2を採用しますし、確認段階において本記事で述べたような内容を相手に説明しますと、ほとんどの方が「CASE2の採用」で納得頂いています。

最後に、主旨とは無関係なので触れませんでしたが、上の説明図の「R=100に対して片勾配7.0%」は設計速度40km/hの規定値となっています。A=60のクロソイド長は36mであり(≒規定値35m)、この条件においてCASE1であっても片勾配すりつけ率は規定値1/100以下で十分に収まっています。