【インターチェンジの設計】「集約ダイヤモンド型」と「平面Y型」の違いを詳しく解説します

はじめに

本文中では、日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」のことを、「解説と運用」と略して記します。

さて、「解説と運用」のP.523のインターチェンジの形式の解説において、「集約ダイヤモンド型」と「平面Y型」について、どちらも下図のような模式図が記載されており「似ている」と思います。

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「解説と運用」P.528からは解説が詳述されますが、「集約ダイヤモンド型」と「平面Y型」の違いは、図面下側のランプの取付部が「平面交差」と記されているか否かの違いくらいで、「結局、何が違うんだ?」と思われる方も少なくないのだろうと想像します。

ここでは、その両者の「違い」について詳しく説明すると共に、各型式に関する簡単な留意点も付記します。

本形式の基本の説明

下図は、上の図に赤色で記した部分を追記した図です。念のため、「最も基本的な部分」から説明します。

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横方向に伸びる道路が「本線」となります。その本線に対してダイヤモンド型(菱形)の形状で4つのランプが配置され、それぞれ「ロングランプ」と接続されています。

なお、「ロングランプ」という名称は正確なものではありません。「至 一般道路」と記している方向に長く伸びており、伸びた先で一般道路(国道や県道など)に接続されている「ロングランプ」となっています。本線が有料道路である場合、一般道路に至るまでの途中に料金所があります。

以上が本形式の「標準的」な形状であり、これについて解説していきます。上図の赤線の破線で囲った部分を拡大したものが、次以降に出てくる図となっています。

集約ダイヤモンド型

「集約ダイヤモンド型」とは、下図のように箇所②と箇所③が「平面交差点」の規格となっている形式です。ちなみに箇所①は両形式とも共通(平面交差点)となっています。

「平面交差点」の規格ですから、箇所①と共に、②も③も通過車両は徐行で曲がる前提となっており、すなわち滑らかな平面線形ではなく「導流路」の規格でキュッとコンパクトに曲がる形状となっています。

また平面交差点の規格ですから、箇所①と共に箇所②にも「一時停止」が伴います。ちなみに箇所③は「分流」ですので一時停止は伴いません。

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以下、両形式の「違い」以外の留意点について簡単に記します。

箇所①について、上図では本線下のランプのほうに停止線(一時停止)を設けていますが、こちらを停止させずに通過させ、本線からのOFFランプのほうに停止線を設ける場合もあります。

箇所②については、上図では本線からのOFFランプのほうに停止線(一時停止)を設けていますが、こちらに関してはここに停止線を設けるケースがほとんどかと思います(私の経験上です)。

平面Y型

「平面Y型」とは、下図のように箇所②と箇所③が平面交差点ではなく「合流」「分流」の形式となっているものです。すなわち導流路としてコンパクトに曲がっている訳ではなく、平面線形を持って滑らかに曲がっており、また一時停止も伴いません。これが上の「集約ダイヤモンド型」とは決定的に異なる部分となります。

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箇所①については本図は両形式とも共通の「導流路による平面交差点」として描いていますが、「平面Y型」においては箇所①においても導流路ではなく平面線形で滑らかに曲げた上で、停止線を設けるケースもあります。

ただし、では上図のように箇所②と箇所③は平面線形であるが箇所①が導流路の場合は、「これは平面Y型とは呼ばないのではないか?」と言えば、決してそんなことはなく、「解説と運用」P.530の解説や模式図を見る限り、むしろ本図の組み合わせこそが「平面Y型」とされています。

平面Y型に「合流車線」を設けるケース

両形式の「違い」とは全く異なる話ですが、「平面Y型」の箇所②においては、合流するそれぞれのランプの設計速度は同一であることがほとんどなので、合流する際の「加速」は生じないのですが、合流の頃合いを見計らう為の「合流車線」として、下図のように加速車線形式で計画することもあります。

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集約ダイヤモンド型に「合流車線」を設けると…

集約ダイヤモンド型の箇所②に「合流車線」(加速車線)を設けた場合は下図の通りとなります。

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こうなると箇所③に加えて箇所②においても、導流路規格でコンパクトに曲がっているとは言え停止線(一時停止)は生じない訳ですから、「平面交差点」という色合いが極めて薄れ、集約ダイヤモンド型というよりかは「平面Y型」と呼ぶほうが正しいようにも思えてきます。ひとつ前の『平面Y型に「合流車線」を設けるケース』と見比べた時に、箇所②及び箇所③における「曲がり具合」が異なるだけで、機能的な意味での「形状」に特に相違が無いことがお分かり頂けると思います。

このような形式に対して無理にどちらかの名称を当てはめようとすることに意味はありません。更に言うと、例えば自分や関係者が「集約ダイヤモンド型」だと思って計画を進めている際に、諸条件をクリアする為には箇所②に合流車線(加速車線)を設ける(上図)ことが適切だったとして、「このほうが適切だけど、こうしてしまうと『集約ダイヤモンド型』ではなく『平面Y型』になってしまうのでダメかなぁ…」と言った発想は明らかにおかしいのであって、そのように「名称」に固執する意味は何もないので「あくまで求められる機能を出来るだけ担保出来るような形状を考える」のが正しい姿勢ではないかと、個人的にはそのように考えています。

余談(縦断の緩勾配について)

両形式とも、「平面交差点」に該当する箇所には「緩勾配」の確保が必要となります。特に「平面交差点ではあるが一時停止は伴わない箇所」において緩勾配の確保が必要なのか、確保する場合は(停止線が無いので)どこを基点として確保するのかなど様々なケースがありますので留意が必要です。

おわりに

以上、「集約ダイヤモンド型」と「平面Y型」の違いについて詳しく解説してみました。