【片勾配】規定の片勾配を付すことが出来ない場合の照査方法を詳しく解説します

はじめに

ここで述べる内容は、全て日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」に準拠した話となります。以下、「解説と運用」と略して記します。

概説

平面線形で採用した曲線半径に対して規定の片勾配を付すことが出来る場合はそれ以上考える必要は基本的に無いのですが、諸般の事情により規定の片勾配を付すことが出来ない場合、安全性に対する照査が必要となります。その照査方法を以下に解説致します。

この場合、「横すべり摩擦係数」という値を用いて照査を行います。

「解説と運用」P.340の以下の算式、

{\displaystyle\ i+f=\frac{V^{2}}{127R}}

これの左辺iを右辺に移項し、

{\displaystyle\ f=\frac{V^{2}}{127R}-i}

という算式で照査を行います。算式内の文字は以下の通りです。

f:横すべり摩擦係数
V:設計速度(km/h)
R:曲線半径(m)
i:片勾配

算式のざっくりとした意味を解説すると、Vが大きい(速度が高い)ほど、またRが小さい(カーブが急である)ほど、VとRから算出される値は大きくなりますが、そこから片勾配iを減じる(引く)ことにより、横すべり摩擦係数fを低く抑えることが出来ますので、逆に言えば、小さな片勾配iしか付すことが出来ない場合は、減じるiが小さくなることにより、横すべり摩擦係数が大きくなってしまう、という内容となっています。

こうして算出された「横すべり摩擦係数」の安全性を照査することになります。

実際の計算方法(サンプル)

■片勾配を低減する場合

逆片勾配とはならず曲線半径に準じた方向に片勾配を付すことが出来るが、規定の片勾配よりかは緩い値しか採用出来ないケースです。

例えば設計速度V=40km/hで、曲線半径R=80を採用する場合、片勾配の規定値は「解説と運用」P.334によりi=8%ですが、これが同方向だがi=2%しか付すことが出来ないケースを考えます。

先述の算式に、
V=40
R=80
i=0.02
を代入し、横すべり摩擦係数fは、

{\displaystyle\ f=\frac{40^{2}}{127×80}-0.02≒0.137}

と算出され、これが規定値f=0.15よりかは小さいので「最低限の安全性は確保されている」と判断します。もし0.15を超えるようなケースなら、原則として曲線半径から見直す必要があります。なお、「規定値」に関しては後述します。

■逆片勾配となる場合

曲線の向きとは逆向きの片勾配が付いてしまうケースであり、非常に厳しいケースです。逆向きの片勾配なのでiがマイナスの値となり、すなわちfを増加させる方向に働きます。

例えば設計速度V=40km/hで、曲線半径R=130を採用する場合、片勾配の規定値は「解説と運用」P.334によりi=6%ですが、逆向き(逆片勾配)のi=-5%が付いてしまうケースを考えます。

先述の算式に、
V=40
R=130
i=-0.05
を代入し、横すべり摩擦係数fは、

{\displaystyle\ f=\frac{40^{2}}{127×130}-(-0.05)≒0.147}

と算出され、先ほどのケースと同様に規定値f=0.15よりかは小さいので「最低限の安全性は確保されている」と判断します。

判定に用いる「規定値f」について

■第4種以外の道路

「解説と運用」P.317の値を用います(設計速度により0.10~0.15の範囲で規定されている)。

■第4種道路

「解説と運用」P.342のf=0.15を用います。

■ランプの場合

「解説と運用」P.550の値を用います(設計速度などにより0.12~0.23の範囲で規定されている)。

本手法の扱い(注意事項)

以上で述べた内容は、「解説と運用」において手法として示されている訳ではなく、各項目(片勾配の項だけでなく最小曲線半径の項なども含めた全ての項目)を読み込む限り、「最低限、ここまでなら許されるだろう」と解釈した手法となっています。

従って、この手法を用いて、積極的に片勾配を低減したり逆片勾配を採用するような姿勢は厳に慎まれるべき、というのが私の考えです。

では、どのように活用すべきものかと言えば、往々にしてある「諸般の事情で、所定の片勾配を付すことが出来なかったり、場合によっては逆片勾配になってしまう」ようなケースにおいて、平面線形や縦断線形の立案段階も含めての「配慮」などに用いるべき性質のものとなります。

例えば下図のような交差点においては、

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従道路の片勾配に合わせて主道路の縦断線形を波打たせる訳にはいきませんので、主道路の縦断勾配が右下り一定の2.5%だとすると、従道路は交差点を跨ぐ区間では必ず「逆片勾配2.5%」で通過することになります。

特に信号交差点の場合は、従道路側が青信号の際には減速せずに通過しますので、例えば従道路の設計速度がV=40km/hなら、青信号の場合は「単路部V=40km/h」と全く同様に「逆片勾配2.5%」で通過する訳です。

ここで例えば従道路の曲線半径にR=80を採用していた場合、横すべり摩擦係数fを算出すると、

{\displaystyle\ f=\frac{40^{2}}{127×80}-(-0.025)≒0.182}

となってしまい規定値f=0.15を超えてしまうので、せっかく平面線形や縦断線形、テーパー長などが全てV=40km/hの規定値を満足していても、この「横すべり摩擦係数」の判定によって「V=40km/hを満足しない」ものになってしまう訳です。

逆算すれば、R=101以上を採用していれば、

{\displaystyle\ f=\frac{40^{2}}{127×101}-(-0.025)≒0.150}

規定値f=0.15を満足させることが出来る訳ですから、計画段階において「ここでは従道路は逆片勾配となってしまうが、主道路の縦断勾配が2.5%だとすると、従道路の曲線半径はR=101以上としておけば、最低限のf=0.15を満足させられるな」と配慮しながら計画するのが好ましいと思う訳であり、そのような際に用いる手法であると私は考えています。

結局、それでも「R=101以上は採用出来なかった」ということも往々にしてある訳ですが、「主道路の縦断線形が優先なんだから仕方ない」と何も考えていない、というような姿勢は技術者としては全くダメなのであって、達成出来るにしても無理にしても、まずは「目指すべき到達点はどこか」を常に考えながら計画(設計)を進める必要があるのだろうと思っています。

おわりに

以上、規定の片勾配を付すことが出来ない場合の照査方法を解説してみました。

【インターチェンジの設計】ランプのクロソイドも「最小緩和区間長」を確保すべき理由

はじめに

ここで述べる内容は、全て日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」に準拠した話となります。以下、「解説と運用」と略して記します。

さて、クロソイドに関して、本線(高速道路や一般道路)の場合は、

・「解説と運用」P.355で最小緩和区間が規定
・「解説と運用」P.363で最小パラメータが規定

と両方が規定されています。(他に「パラメータの範囲( R/3 ≦ A ≦ R )と片勾配すり付け率の確保にも留意します」)。

それと比べると、ランプの場合は、「解説と運用」P.556によれば(一文中を更に抜粋して引用)、

『クロソイドを考えた場合、その長さよりも、パラメータの最小許容値の指針を与えておくほうが便利な場合が多いので』

との方針で、

・「解説と運用」P.544で最小パラメータのみ規定

となっていて、最小長さ(最小緩和区間長)の規定がありません。

ここでは、規定がないからと言って最小緩和区間長を無視すべきではなく、本線に準じた最小緩和区間長を確保すべきと私が考える理由を述べるものとします。

最小緩和区間長を無視したケースを考える

例えば設計速度40km/hの、1方向1車線のA規格ランプを考えます。地形状況などにより、円曲線の半径はR=90を採用する場合とします。

上記の規定(「解説と運用」P.544の最小パラメータの規定)により、最小パラメータは設計速度40km/hの場合、A=35ですから、それを採用した場合、下図のようになります。車両の進行方向は図の左側から右側に向けて、左カーブとイメージして下さい。

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上図のような計画とした場合、見る限り「クロソイド長が極端に短い」印象となります。そして印象だけでなく実質的にも、

・クロソイド長が13.611mしかなく、走行時間で言えば約1.2秒相当しかない。本線の規定で最小緩和区間長(最小クロソイド長)を考える際のハンドル操作時間が3秒であることを考えると、極端に短いと考えられる。

・クロソイドの移程量(クロソイドがあるが故に円曲線の位置が直線の法線よりインカーブ側にシフトする量)が0.086mしかなく、あっても無くても走行者にとっては違いが無いレベルとなっている。

という風になっており、すなわち下図のような「クロソイドを省略した単曲線」と実質的には変わらない線形となってしまっている訳です。

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上記線形は「他の項目」も満たしてしまっている

■片勾配すり付け率の確保

上で述べたような「A=35、R=90の組み合わせ」は極端にクロソイド長が短くなってしまっている訳ですが、「ランプの線形において、最小パラメータA=35以外に、何か勘案すべき項目は無いのか」と考えた場合、まずは「片勾配すり付け率の確保」が挙げられます。

これは本線と同様にランプでも勘案する必要があり、「解説と運用」P.557でも以下の通り述べられています。

『ただし、片勾配のすりつけ長さが規定の最小パラメータのクロソイド曲線長を超える場合には、緩和曲線の長さは、原則として、すりつけ長さをとるものとする。』

では、上で述べた「A=35、R=90の組み合わせ」ではどうなっているかと言えば、1方向1車線のA規格ランプの場合はR=90であれば曲線拡幅は不要ですから、単純に車線3.50mの半分の1.75mに対して、左下りの1.5%(直線)から同方向(左下り)の7.0%(R=90)まで変化する下降量、

1.75m×(0.070-0.015)=0.09625m

のすり付け率を考えれば良いので、これがクロソイド長13.611mですりつくので、すりつけ率は

0.09625m ÷ 13.611m = 1/141

となっており、13.611mしかない短いクロソイド長でも、規定値1/100を満足してしまいます

■パラメータの範囲

ランプの規定では述べられていませんが、本線の規定では、円曲線の半径Rに対してクロソイドのパラメータAは、

R/3 ≦ A ≦ R

という範囲に収めることを推奨している訳ですが、今回の「A=35、R=90の組み合わせ」の場合、上記式のRに90を代入すると、

30 ≦ A ≦ 90

となる訳であり、A=35というのはこれも満足しています。

残された項目は「最小緩和区間長」しかない

これは設計者(技術者)の価値観によっても異なってくる話ですが、上記のような「A=35、R=90の組み合わせ」の線形に対して、「クロソイド長が極端に短く、実質的には単曲線と変わらないものであっても、各項目の規定値を満たしているのであれば、それでいいじゃないか」という考えもあると思います。

私はそのようには考えず、「実質的に単曲線と変わらないクロソイドというのは無駄でしかなく、また無駄なものは原則として設置すべきでないので、すなわちクロソイドを設置するのであれば、意味のある線形としたい」と考える訳です。

そして、クロソイドの長さをもう少し長めに設定する為に参照すべき規定の項目が他に何が残っているかと言えば、それは(本線の規定の)「最小緩和区間」しか残っていない訳であり、またこの長さは3秒走行長として算出されている(無理のないハンドル操作時間を3秒として算出されている)訳ですから、「本線(高速道路や一般道路)の走行者に対して無理のないハンドル操作時間である3秒を、ランプの走行者に適用しても、両者は基本的に同一人物(日本国内のドライバー)である訳なので、全く不自然ではない」と考えられますので、私は余程の事情が無い限り、この「最小緩和区間長」を勘案してパラメータ(クロソイド長)を決定しています

ちなみに、R=90に対して、設計速度40km/hの最小緩和区間長L=35mを確保した場合、パラメータはA=56.125となりますので、それを丸めたA=60を採用した場合の線形は下図のようになります。

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おわりに

以上、ランプのクロソイドも「最小緩和区間長」を確保すべきと私が考える理由について詳しく述べてみました。

【インターチェンジの設計】分離帯ランプの曲線拡幅量の割増しについて

意識せずに「標準幅員」では無くなってしまう

ここで述べる内容は、全て日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」に準拠した話となります。以下、「解説と運用」と略して記します。

さて、インターチェンジのランプは「ランプ規格」ごとに標準幅員が決まっており、そしてそれに応じて「曲線拡幅量」が規定されています。

主に左側路肩に関して、縮小値を採用したり、逆に何かの事情で標準値よりも広くしたりして、「標準幅員」とは異なる幅員を採用した場合は、その増減量に応じて「曲線拡幅量」も加減しなければなりません。このことは、多くの方もご存じと思います。

今回取り上げたいのは、上記のような「意識的な路肩幅員の変更」の話ではなく、下図の下段のような「分離帯ランプ(2方向分離2車線のランプ)」に関するものです(下図はA規格ランプとなります)。

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分離帯ランプ(2方向分離2車線のランプ)の場合、それ自体に対しては「曲線拡幅量」の規定がなく、すなわち分離帯より片方だけ見れば「1方向1車線」に他ならない訳ですから、それの「曲線拡幅量」を参照して設計することになります。

さて、上図の上段には「1方向1車線」の幅員図を記していますが、これと下段の「分離帯より片方のみ」を見比べると、総幅員(①と②)が異なっていることが分かります。すなわち、下段のほうが右側路肩(に相当する部分)が0.25m狭い分、総幅員も0.25m狭い訳です。

上図はA規格ランプですが、B~D規格ランプも全て同じ関係となっています。上図のA規格ランプも含めて、全ての規格の①と②を列記すると以下の通りです(「解説と運用」のP.546~549より)。

■A規格ランプ
①7.00m
②6.75m

■B規格ランプ
①5.50m
②5.25m

■C規格ランプ
①5.25m
②5.00m

■D規格ランプ
①4.75m
②4.50m

すなわち、分離帯ランプ(2方向分離2車線のランプ)の場合、特例値を使用するなどしておらず、「そのまま標準幅員を採用する」場合においても、「曲線拡幅量」という観点から見た場合、「勝手に標準幅員とは異なる(0.25m狭い)幅員となっている」ことになるので、注意が必要である訳です。

標準幅員とは異なる場合の曲線拡幅量について

「解説と運用」P.543の、「1方向1車線」の曲線拡幅量の規定値一覧表には、表の最も上の欄に、

・A規格ランプ7.0m
・B規格ランプ5.5m
・C規格ランプ5.25m
・D規格ランプ4.75m

と、上記の①と一致した値(標準幅員)が明記されています。

「解説と運用」P.556には、注意事項の1つ目として、

『ⅰ)基準に示された拡幅量は標準幅員に対するものであるため、異なった横断構成を採用する場合は、標準幅員からの幅員差だけ拡幅量を加減することが必要である。』

と記されている訳ですが、今回のケースは「異なった横断構成を採用」しているというよりかは、分離帯ランプは「右側路肩の内、0.25mは分離帯の地覆を兼ねているので、標準幅員よりも舗装面が0.25m狭くなっている」というケースです。

では、地覆というのは舗装面と同一面ではないながらも、「幅員」としては認められている空間ですから、これは「曲線拡幅量」を考える場合の幅員部分に含めて良いのかと言えば、決してそんなことは無いということが、「解説と運用」P.556の注意事項の2つ目に記されています。以下に引用します。

『ⅱ)トンネルまたは長さ50m以上の橋もしくは高架のランプにあって、路肩の一部が地覆を兼ねている構造の場合は、前述の必要総幅員を確保するため、原則として、地覆の幅員だけ拡幅量を増すものとする。(後略)』

以上は「トンネル、橋もしくは高架」に関する記述ですが、「曲線拡幅量を考える際の幅員に、地覆を含めてはならず、地覆の分は拡幅量を増すこと」という趣旨は今回取り上げている「分離帯ランプ」にもそのまま適用されるべきであり(適用しなくても良いとは読み取りようがない)、また後略部分には「地覆の幅の拡幅量を省略することができる」旨も記されていますが特例的な扱いであり、あくまで「原則」は上記の通りである訳です。

以上のことから、分離帯ランプ(2方向分離2車線のランプ)の場合、曲線拡幅量は0.25m割り増すことが原則であると、私は考えています。

おわりに

例えばA規格ランプなら左側路肩に縮小値の規定がありますが、縮小値を採用しているにも関わらず、曲線拡幅においてそのことを勘案し忘れているというケースも少なからず見かけるのですが、これは「大半がそうなっている」というほど多い訳ではありません。

それと比べると、今回取り上げた「分離帯ランプ(2方向分離2車線のランプ)」の曲線拡幅において0.25mの割増しを忘れているというケースは非常に多いです。体感では「大半がそうなっている」というレベルと思います。

技術論としては「0.25m割り増すべき」が正解であると思うことは本文で述べた通りなのですが、一方で「現実にはそうなっていない設計が大半である」ということを踏まえると、「0.25m割り増して当たり前だ」とまでは言えないな、とも思っています。

という訳で、この事項は「初期段階において、関係者に、特に強く確認すべき事項」として扱っています。

新規設計の場合は、本文で述べたような内容を説明すると、ほぼ例外なく「0.25m割り増す」方向で決まります(割り増さないという風には読み取りようがない為)。既往の設計を見直す場合は、「0.25m割り増す」場合と「割り増さずにそのまま」の場合が半々という印象です。

結果的には「割り増さずにそのまま」となる場合においても、過程として「技術論としては、0.25m割り増すべきだが」という提案や確認などを踏まえることが、技術者の姿勢として極めて肝要であると考えています。

【インターチェンジの設計】変速車線(ランプターミナル)の路肩幅員について詳しく解説します

主旨と結論

本線とランプの路肩幅員が異なる場合、そのつなぎ目に位置する変速車線(ランプターミナル)の路肩幅員は、どちらと合わせるべきでしょうか?

特にランプ路肩のほうが本線路肩よりも広い場合、変速車線の路肩幅員を広いランプ路肩幅員に合わせてしまうと、ただでさえ本線車線と変速車線が並走していて全体として広大な幅員となっている区間において、更に「本線単路部よりも広い路肩」を設ける訳ですから、かなり過大な印象となります。

ですが結論から書くと、本線路肩とランプ路肩の大小関係に関わらず、変速車線の路肩幅員は「ランプ路肩」と合わせるのが正解となります。

繰り返しとなりますが「本線路肩とランプ路肩の大小関係に関わらず」ですが、例として「ランプ路肩のほうが本線路肩よりも広い場合」のサンプル図面を以下に示します。が正しくて、×が不正解となります。

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なお、このサンプル図は「OFFランプ(減速車線)」の例ですが、「ONランプ(加速車線)」も同様です。

以下、根拠と留意点を記します。

根拠

日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」のP.561には、

変速車線の横断構成は原則としてランプの横断構成と同一とする。

と明記されており、かつ、その次のページであるP.562に「変速車線の横断構成」として下図の通り定義されています(下図は原本を見ながら私がCADで書いたものです)。

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以上を見る限り、「変速車線の路肩幅員はランプ路肩幅員である」としか読み取りようがなく、かつ基本でも標準でもなく「原則」とされていますので、余程の事情がない限りは従うべき事項なのだと私は解釈しています。

留意点

以上は当然ながら「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」に準拠して設計する場合の話となります。

すなわち、高速道路会社等が独自の基準を出しておりそちらに準拠する場合などは、上記の限りではありません。例えば特例として「ランプ路肩よりも本線路肩のほうが狭い場合は本線路肩を採用することを認めている」ケースもあります。

おわりに

以上、「変速車線(ランプターミナル)の路肩幅員」について解説しました。

【インターチェンジの設計】減速車線(直接式)の設計方法を詳しく解説します

はじめに

インターチェンジのランプターミナルにおける変速車線の形式には「直接式」と「平行式」があります。

加速車線には「平行式」が採用されることが多いですが、逆に減速車線のほうは「直接式」が多く採用されます。

下図は減速車線に関して、上段「直接式」を採用した場合(多く採用される)、下段に「平行式」を採用した場合(あまり採用されない)の概要図を表したものです。設計速度は80km/hとして書いています。

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ここでは「直接式の減速車線」に関する設計方法を詳しく解説致します。

平行式と異なり「直接式」の場合はテーパー長が規定されておらず「テーパー角」で規定されているので、まずは前半で、

・テーパー長を決める方法とその意味

を解説します。

後半では、

・本線が直線ではなく「曲線」である場合の留意点

について解説致します。

なお、日本道路協会から発行されている「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」のことを、以下の文中では「解説と運用」と略して記します。

テーパー長を決める方法とその意味

■延長ではなく「角度」で規定される

「解説と運用」P.565では直接式の減速車線のテーパー長(テーパーの長さ)に関して「特に規定しないが、テーパの流出角は1/15~1/20を目標にするのがよい」と記されています。

従って「テーパー角が1/15~1/20」になるように逆算して、テーパー長を決めることになります。

■実際の決め方

以下、本線の道路種級は第1種第3級程度、本線の設計速度は80km/hをイメージして参照図を記していますが、道路種級や設計速度には関わらない内容となります。

さて、下図はテーパー部分の平面図と、テーパー端(A-A)、及びテーパー終わり(B-B)での幅員構成を記しています。

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流出を行う走行車両は、A-A断面の本線最外車線から、B-B断面においては本線最外車線から側帯相当幅をまたいだ位置にある減速車線まで移行(シフト)します。その「シフト量」は、上図のような断面図を考えれば単純計算で4000mm、すなわち4.000mと求まります。

テーパー長の算出は、この「シフト量4.000m」を用いて、

 シフト量 ÷ テーパー角 = テーパー長

と求めます。テーパー角を1/15とする場合なら、テーパー長は

 4.000m ÷ 1/15 = 60m

となりますし、テーパー角を1/20とする場合なら、テーパー長は

 4.000m ÷ 1/20 = 80m

となります。ちなみに上図はこの「80m」の場合で書いています。

テーパー長の決め方の説明としては以上です。次に、上の「計算」の意味を説明します。

■計算の意味の説明

1/15の場合も同様ですが、ここでは1/20の場合で説明を進めます。

「テーパー角を1/20」と規定する意味は、下図のように、「本線進行方向に⑳の距離を進んだ際に、①の割合で横方向にシフトするような割合となるように、テーパー角θを規定している」という意味となります。

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すなわち、算数的な比で表せば、

テーパー長80m:シフト量4.000m=⑳:①

という比となっており、先に「シフト量4.000m」が決まっているので、この比となるように「テーパー長80m」を算出する為の計算が、

 4.000m ÷ 1/20 = 80m

である訳です(何故に分数の割り算となるのか等の「算数の内容の説明」は省略します)。

本線が曲線である場合の留意点

■あくまで「角度」の規定であることに注意

上の例では「本線が直線」である為、「80m進むと4mシフトする」という割合で減速車線の直線をセットすれば、テーパー端(A-A)での角度θもぴったり「⑳進むと①シフトする」角度となりますが、本線が曲線の場合は必ずしもそうなりません。

その場合、上記のように「80m」と決めておけば、「全体80mで見れば、⑳(80m)進むと①(4.000m)シフトする割合となっているのだから、テーパー端での実際の角度はどうでも良いか」というような態度は、技術者としては慎まれるべきです。

すなわち、「⑳進んだら①シフトする角度θ」とは、上図の「赤線で示す三角形」を考えれば、

 tanθ = 1/20

ということですから、すなわち、

 tan2.862405° = 1/20

ということであり、すなわち「テーパー角θ=2.862405°」と規定されていると言い換えることが出来る訳です。

従って、いわゆる「変化の割合」として「⑳(80m)進むと①(4.000m)シフトする割合」を勘案してテーパー長を決めた後にも、本線が曲線の場合は「テーパー端での実際の角度θ」が何度であるか(1/〇で表したら1/15~1/20の範囲にあるか)を必ず照査する必要があります。

それをしないと「極めて不適切な線形」となる例を2つ下に記します(このような例は何度も見かけたことがあります)。

■本線が曲線の場合の適切な例

例えば本線がR=700であれば、減速車線も同様にR=700を採用すれば(下図)、テーパー角θはほぼ1/20となります。

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照査の方法ですが、減速車線の線形を決めたら、テーパー端での方向角が算出出来ます。それと、テーパー端での本線の方向角との差が「テーパー角θ」となります。

今回の例では、θ=2.869058°となり、

 tan2.869058° = 0.050116… ≒ 1/19.95

となっており、「ほぼ1/20となっている」と言えます。

■本線が曲線の場合の不適切な例

例えば本線R=700に対して、他の事情を優先して減速車線をR=2000としてしまった場合が下図です。

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この場合は、テーパー角θ=0.711105°となっており、

 tan0.711105° = 0.012412… ≒ 1/80.57

となっており、「1/15~1/20」の範囲には全く入っておらず(角度が緩すぎる)、「極めて不適切な例」となります。

■テーパー角は緩すぎてもダメ

テーパー角がきつすぎると「急すぎて流出車両がきちんと走れない」という意味で不適切となり、これは分かりやすいと思います。

もし、緩い分にはどれだけ緩くてもOKなのであれば、規定は「1/15以下とする」となっているはずですが、「1/15~1/20」と下限値も設定されているということは、「緩すぎてもダメ」ということを意味しています。

何故に「緩すぎてはダメ」かと言うと、例えば上図の「不適切な事例」が典型的ですが(路肩のラインを見れば「テーパー角がほとんど付かずに真っすぐ通ってしまっている」と分かると思います)、このような線形は「テーパーの始まりがどこか視覚的に分からない」とか「本線を通過したい車両が間違って減速車線に入ってしまう」などの理由で「不適切」とされています。

従って「解説と運用」に準拠して計画する場合は、原則として「1/15~1/20」の範囲内に収めるべきと私は考えています。

おわりに

以上、直接式の減速車線の設計方法を詳しく解説しました。